僕とギター

ギターの練習日誌、ときどき普通の日記

東京マッハ vol.14

今日の夜は「東京マッハ」というイベントのため、

浅草に行っていた。

東京マッハとは、

千野帽子さん(日曜文筆家)

米光一成さん(ゲーム作家)

長嶋有さん(小説家、俳人

堀本裕樹さん(俳人)による公開句会で、

毎回ゲストを呼んで行なわれている。

14回目となる今回のゲストは歌人穂村弘さん。

これまでのゲストは女性ばかりだったようで、

「そして夏そして浅草男祭」と題されていた。

 

登壇者たちの俳句を客である私たちも選句して、

みなさんの選評を聞く、という内容。

教科書で習ったような句とは少し違う、

自由な句が多いことと、

みなさんの選評やたわいのないやりとりがおもしろく、

3時間ほどのイベントはあっという間に終わってしまった。

 

たいてい選評を聞くと、句の印象は変わってしまう。

句の解釈というのは人によって異なるもので、

そんな見方もあるのか!と感心することが多い。

 

今回一番多くの人に選ばれたのは穂村さんの一句

「噴水の鍵噴水に濡れてゐる」

私は「噴水」が続くことが気になって選ばなかったけど、

この繰り返しがリズミカルでよいらしい。

「噴水の鍵」は「噴水を作動する鍵」と捉える人が多かったけど、

長嶋さんは「ゲームのように噴水に隠されているカギともとれる」と話していた。

堀本さんは「金属の鍵が噴水に濡れてキラキラしている様子が綺麗だし、ふくらみのある句」と言っていた。

 

そのほか、高評価で私もおもしろいと思った句と、

覚えているうちに選評を書き残しておく。

 

リンカーン・コンチネンタル夏至の夜を右折」(長嶋さん)

リンカーン・コンチネンタルと極端な字余りが長い車を表している。

もっとも短い夏至の夜との対比や、

「右折」という曲がりにくさに車の長さが表現されていておもしろい。

 

「3Dメガネ右目が青や夏の君」(長嶋さん)

右目が青の3Dメガネということは、

むかし子供向けの雑誌ついてきた付録のようなもの。

それをかけた夏の君、という表現がかわいい。

長嶋さん曰く「3Dメガネはすべて右目が青(本当)」

 

「人妻の下着盗んで捨てる滝」(米光さん)

「〜捨てる」までは逆選(文句をつけてやりたい句)だけど、

最後に「滝」という夏の季語で締めている意外性がよい。

穂村さんの「大自然と人工の極致」というコメントもおかしかった。

 

「手提げ金庫の把手小さく入梅す」(長嶋さん)

手提げ金庫の把手が小さい、というささやかなことに気づく視点がよい。

金庫のなかにはきっと大切なものが入っていて、

それはずっと変わらないものだけど、

季節は移り変わる、という対比もよい。

季節を表すなら「入梅す」じゃなくてもよい、

という米光さんの批判的な意見もあった。

それを受けて長嶋さんが

「ツタヤでDVDを1枚借りたときに入れてくれる袋の把手が妙に小さい、

というようなことを句にしたかった」と話したら、

米村さんが「雨のなかDVDを返しに行く面倒くささが現れるからそのほうがよい」

と返していた。なるほど。

 

「ソーダ水クラスのみんなには内緒」(米光さん)

会場の評価がもっとも高かった句。

私も爽やかさと懐かしさが綺麗に表現されていると思って選んだ。

登壇者の評価もそのままだったけど、

千野さんは「以前自分も似たような句を作ったから、

誰もが作りたくなる俳句」

という理由で逆選にしていた。

米光さんによると「クラスのみんなには内緒だよっ」は

魔法少女まどか☆マギカ』の名セリフ。

まどかがほむらちゃんに言うことから、穂村さんへの挨拶句だそう。

 

ギターの練習について書くよりも長くなってしまった。

そりゃあそうだな。